津山中央病院


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診療について

診療について

 

 

 

消化管外科

 

 

消化管外科 胃

胃がんを始め、胃粘膜下腫瘍や胃十二指腸潰瘍穿孔などの疾患に対し手術を行っております。当科では腹腔鏡と呼ばれるカメラを用いて小さな傷で行う、体に負担の少ない低侵襲手術を積極的に取り入れております。治療を開始する前には丁寧にご病状の説明をさせていただくとともに、ご質問やご希望をうかがいながら治療の方向性を決めていきます。安心、安全で、患者様・ご家族様がご納得いただける治療を提供させていただきます。

 

胃がんについて

 胃がんは日本人に多いがんであり、近年は罹患者数が減少傾向にあるものの、死亡者数は全てのがんの中で3位(2021年現在)と依然として高い状況にあります。胃がんに対する治療は日本胃癌学会による「胃癌治療ガイドライン」に基づいて行っており、胃カメラ(内視鏡)やCT検査などで診断された胃がんのうち、原則として内視鏡切除の適応とならないものが外科手術の適応となります。外科手術の適応とならないものについては科学的根拠に基づいた適切な抗がん剤治療を行います。いずれの治療においても、患者さんの個々の状態に応じた最適な治療を心がけています。

 

低侵襲手術について

 当院ではすべての胃手術に対し、小さな傷で行う体に負担の少ない手術を積極的に導入しております。これらは低侵襲手術と呼ばれ、傷が小さいため整容性に優れるとともに術後の痛みが少なく、手術からの回復も早いといったメリットがあります。また、技術の進歩により、安全性やがんの再発率の観点からも開腹手術と比べて同等以上の安定した治療成績を収めており、現在では一部の困難例を除いてほとんどの胃手術が低侵襲手術となっております。
 2021年からは従来の腹腔鏡下手術に加え、より精細な操作が可能なロボット支援手術も導入し、技術的に困難な進行胃がんを中心に適応しています。

 


胃粘膜下腫瘍について
 胃粘膜下腫瘍は良性疾患の割合が高く、いかに効率よく胃を温存するかが術後の回復にとって重要です。当科では消化器内科医師と協力して内視鏡切除と腹腔鏡下切除を併用することにより胃壁の欠損を最小限に抑える工夫を取り入れております。これを、腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除術(Laparoscopy Endoscopy Cooperative Surgery; LECS[レックス])と呼びます。
 ほかにも、胃十二指腸潰瘍穿孔に対する緊急手術や、通過障害に対する胃小腸バイパス術など、様々な病態に対応しております。

当院における胃領域手術件数の推移
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消化管外科 大腸
 大腸がんの罹患率は50歳代から年齢が上がるにつれ高くなります。男性では肺がん、胃がんに次ぐ3位なのに対し、女性では1位となっています。罹患率においても女性では毎年増加傾向にあります。大腸がんは日本人では直腸がん、S状結腸がんが多いとされ、次いで上行結腸がん、直腸S状部がん、横行結腸がん、盲腸がん、下行結腸がんの順になります。

 大腸がんは早期のものは無症状のものが多く、進行すると症状が出現することがあります。症状は血便、排便習慣の変化(便秘、下痢)、便が細くなる(狭小化)、残便感、貧血などで、腫瘍が大きくなり腸管の内腔が狭くなると腹痛、腹部膨満感、嘔気、嘔吐などの症状が出現します。また腫瘍が他の臓器へ転移、浸潤した場合は他臓器の画像検査や他臓器症状(血尿、性器出血など)が発見の契機となることもあります。また肛門に近い腫瘍では血便や便柱狭小化を来すこともあります。
 手術の原則は腫瘍のある腸管だけでなく、腸管を栄養する血管を処理し、がんが広がっている可能性のある周囲のリンパを広範囲に切除します。近年、当院での大腸がん手術は腹腔鏡下手術がほとんどであり、傷が小さく回復が早いのが特徴です。また最近では
ロボット支援下手術も直腸がんにおいて保険適応となり、当院では2022年4月から導入
しています。ロボット支援下手術は腹腔鏡手術と比較してより繊細な手術が可能となると期待されています。肛門に近い癌でも、肛門温存が可能な手術を行っております。(TaTME)

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消化管外科 食道
 当院では、食道疾患すなわち食道裂孔ヘルニアなどの良性疾患や、食道癌などの悪性疾患に対しても積極的に鏡視下手術を行っています。
■食道裂孔ヘルニア
 体内には、胸部(肺や心臓などが入っている部分)と腹部(胃や腸、肝臓などの臓器が入っている部分)を隔てている横隔膜という筋肉の薄い膜があります。横隔膜には、食道が通る穴(食道裂孔と呼ばれる)があいていますが、ここから、本来、腹部(横隔膜の下部)にあるべき胃やその他の臓器が胸部(横隔膜の上)に飛び出してしまうのが<食道裂孔ヘルニア>です(図1)。
 食道裂孔ヘルニアは症状のでない場合が多いのですが、胃酸が食道に逆流しやすい状態になっているため、<胃食道逆流症>や<逆流性食道炎>により、胸やけや呑酸(すっぱいものや苦いものがのどにあがってくること)、消化不良などの症状が現れることがあります。また、飛び出した胃や他の臓器が横隔膜に締め付けられてしまったり、胸の中で捻転した場合、血流が悪くなって壊死してしまうことがあります。痛みを伴うこの重篤な状態は、陥頓(かんとん)と呼ばれ、緊急手術が必要になることがあります。 
 さらに、脱出した臓器により肺や心臓が圧迫されて呼吸困難や心不全などの症状をきたすこともあります。胃酸を抑える薬(制酸剤・プロトンポンプ阻害剤・H2ブロッカーなど)を服用しても症状が改善しない場合や、胃や食道が締めつけられすぎる場合は、手術で治療を行います。全身麻酔で、①胸に飛び出した胃や他の臓器をおなかに引き戻す ②緩んだ食道裂孔を糸で縫い縮める ③下部食道に襟巻のように胃の壁を巻き付け、逆流を予防する(図2)、という手術です。以前は開腹手術で行われていましたが、近年、腹腔鏡手術の技術が向上し、腹部に4~5か所約1cmの傷をあけて、細い器具とビデオカメラを挿入して行う腹腔鏡手術が普及しており、当院でもこの手術を第一選択として行っています。

図1 図2

 

■食道癌
 食道癌は消化管の悪性腫瘍の中では比較的稀で、胃癌や大腸癌の1/7ほどです。発症リスク因子として飲酒および喫煙との関係が指摘されており、1日30本以上のヘビースモーカーや、酒1.5合以上の飲酒の習慣がある人では、食道癌の発生率が、非喫煙・非飲酒者の40倍と報告されています。
 早期の食道癌は症状に乏しく、進行するに従い食道のしみる感じや不快感、違和感が出現します。増大して食道内腔が狭窄し通過障害をきたして受診される患者さんも多く、治療開始前に経腸栄養や高カロリー輸液など栄養療法を先行しなければならないこともあります。しかし最近では内視鏡検査の普及・進歩に伴い、胃カメラで早期食道癌が偶然発見されることも多くなっており、このような粘膜層にとどまる早期食道癌に対しては、内視鏡的切除が可能です。低侵襲であるため御高齢の患者さんでもQOLを損なうことがなく、非常に有用です。当院消化管内科でも年間約15~20例の患者さんに行い、良好な治療成績を得ています。
 しかしながら粘膜下層以深に浸潤したりすでにリンパ節転移を伴う進行食道癌に対しては、根治性(癌が治癒する可能性)を高めるために放射線治療(陽子線治療を含む)や化学療法・外科的切除(手術)もしくはこれらを組み合わせた集学的治療を行うことが必要です。特に進行食道癌治療の基本となる手術は、頸・胸・腹部の3領域に手術範囲が及ぶため、高度の侵襲(体に与えるダメージ)を伴い、他の消化器癌に比べ合併症の頻度が高く術前術後のリハビリや術後集中治療が不可欠とされてきました。しかし鏡視下手術の進歩に伴い、胸腔鏡下に食道切除・リンパ節を郭清し、腹腔鏡下に作成した胃管を用いて再建することが可能となり、侵襲の軽減に役立っています。この手術の利点としては、①従来の開胸手術では右側胸部を約10~15cm切開していましたが、胸腔鏡下手術では約0.6~1cmの創が6か所(図3)で整容性に優れる、②開胸手術よりも胸壁の破損が少なく術後疼痛も少ないため早期離床・リハビリの開始が可能でひいては肺炎や血栓症などの合併症軽減につながる、③胸腔鏡の拡大視効果により微小な血管や神経を損傷することなく緻密な手術が可能であることなどがあります。当院でも2017年11月より岡山大学病院消化管外科の協力を得て、胸腔鏡を用いた食道切除・腹腔鏡を用いた胃管作成・胸骨後経路再建を導入し、良好な術後経過を得ています。
図3
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 肝胆膵外科

 肝胆膵外科では、主に肝臓、胆道(胆嚢・胆管)、膵臓疾患の手術を担当しています。当院は、日本肝胆膵外科学会が規定した高難度肝胆膵外科手術を年間30例以上行っている高度技能専門医制度認定修練施設(B)として認定されています。2名の高度技能専門医を中心に、岡山県北唯一の認定施設として、安全で質の高い外科治療を提供して参ります。

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呼吸器外科

 肺、縦隔、胸壁の手術治療を担当しています。当科では年90例前後の呼吸器外科手術を行っています。

 

患者様に最適な治療オプションを提供

 当院では、呼吸器外科、呼吸器内科、腫瘍放射線治療科の合議により、患者様の状況に合わせ最も適切な治療方法を提案しています。根治切除可能な場合などで手術が最適との判断になりましたら、呼吸器外科が担当します。手術のメリットとデメリットを納得のいくまで十分にご説明し治療を提供しています。

 

体に優しい低侵襲手術と術後ケア

 負担の少ない胸腔鏡手術やロボット支援手術をほぼ全例に適用し、痛みや体力消耗の軽減をはかっています。また、外科病棟・ICUスタッフや呼吸器リハビリテーションの専門スタッフなどで構成された当院自慢のチームで周術期管理を実践しており、極めて低い術後合併症発症率を誇っています。回復経過も早く、ほとんどの患者様が数日で退院できています。80台、90台の高齢者の手術も多く行っています。

 

当院で対応している胸部呼吸器疾患

・肺癌

 肺癌はわが国で最も死亡者数の多い癌種で、多くが進行した状態で発見されますが、肺がん検診や他の疾患の検査中に偶然発見された早期肺癌は、切除手術を行うことで根治が期待できます。また、進行肺癌や術後再発癌であっても、切除手術と最近進歩が著しい薬物療法や放射線治療との組み合わせにより、治癒や長期間制御が可能な場合が多くなりました。当院では早期肺癌から進行肺癌までのすべてをカバーした3科合同の集学的治療を提供し、全国標準と同等以上の治療成績をあげています。
肺癌の標準的な切除方法は、かつては肺葉切除+系統的リンパ節郭清でしたが、末梢小型早期肺癌や体力的に肺葉切除が困難な場合などには、根治性を担保しつつ、より切除範囲の小さい区域切除や部分切除を行い、呼吸機能や体力の温存をはかっています。ほぼ全例で胸腔鏡やロボットを用いた低侵襲手術を行っています。
 切除手術後の病理検査の結果をふまえて、最終的な進行度診断と、術後のフォローアップをしています。ステージⅠA2までの早期肺癌であれば、CT定期健診を5年間行い、無再発を確認します。より進行した肺癌であることが判明した場合は、完全切除ができた場合でも、肺癌学会ガイドラインにしたがい再発を少しでも低減するための薬物療法をお勧めしています。

・転移性肺腫瘍

 他の臓器癌からの肺転移に対しては、全身化学療法を行うのが一般的ですが、大腸癌、肝臓癌、腎臓癌など、切除することで予後改善が見込まれる肺転移に対しては積極的に手術を行っています。ほぼ全例で胸腔鏡を用いた低侵襲手術を行っています。

 

・良性肺・胸部疾患

 肺癌との区別が難しい良性肺腫瘍や、感染による炎症性疾患、巨大肺気腫など、切除することで改善が期待できる場合には手術を行っています。ほぼ全例で胸腔鏡を用いた低侵襲手術を行っています。

 心臓を収める袋(心嚢)に水がたまり心不全になる心タンポナーデでは、心嚢に窓を作り水がたまらないようにする開窓術も胸腔鏡で行っています。
・縦隔腫瘍
 前縦隔の胸腺腫瘍、中縦隔の気管支嚢腫、後縦隔の神経原性腫瘍など、悪性の可能性がある縦隔腫瘍は積極的に切除手術を行っています。巨大なものや心大血管などに浸潤している場合を除き、胸腔鏡を用いた低侵襲手術を行っています。

・気胸
 もともと存在した肺表面の脆弱部分の自然破綻や外傷などにより、肺内から胸腔へ空気が漏れると、その空気圧で肺がパンクします。当科では、まずは空気圧を体外に逃がすチューブを肋間から胸腔へ入れる治療(胸腔ドレナージ)を行いますが、自然治癒せずに空気が漏れ続けたり、自然治癒と再発を繰り返したりする場合には、空気漏れを起こしている部分を閉鎖する手術を行っています。全例で胸腔鏡を用いた低侵襲手術を行っています。
・胸膜炎・膿胸
 肺の周囲の胸腔に感染などにより膿が貯留する胸膜炎・膿胸に対して、胸腔を清浄化するための手術を行っています。早期の膿胸であれば胸腔鏡で洗浄しますが、晩期になると肺が虚脱して小さくなったまま固まってしまうため、胸腔を開放して数ヶ月洗浄を繰り返し肉芽や周囲の組織で埋めなおす胸郭形成手術を要することもあります。
・胸部外傷
 交通事故や転倒転落事故など高エネルギー外傷における胸腔内出血や多発肋骨骨折などでは呼吸器外科が介入対応し、救急救命科、腹部外科、整形外科、脳神経外科などと協力して救命に努めています。
受診希望、ご相談、ご質問は、呼吸器外科担当医 西川まで
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 乳腺外科

 乳腺外科は、乳癌を中心に各種乳腺疾患を扱っており、乳癌検診に始まりマンモグラフィー、エコー検査、MRI検査、針生検、マンモトーム等を駆使して診断にあたっています。乳癌の手術症例は平成27年には年間59例で、内分泌療法や化学療法、放射線療法等を組み合わせた集学的治療を行っています。乳房温存手術やセンチネルリンパ節生検にも積極的に取り組んでいます。

 

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救急外科

 高齢化率35%を超える岡山県北唯一の救命救急センターである当院では、岡山県北の最後の砦として近隣医療機関からの救急患者紹介を一手に引き受けています。緊急手術・準緊急手術にも随時対応し、その数は外科全手術症例の約3割を占めています(図1)。緊急手術の原因疾患は、虫垂炎が最も多く、ついで胆嚢炎、腸閉塞、ヘルニア陥頓、上部消化管穿孔、下部消化管穿孔となっています(図2)。当院では、夜間・休日も常時2名の外科医が待機しており、緊急呼び出しにも対応可能な手術室スタッフ・麻酔科医、外傷やショックに対して初期対応可能な救急医が常駐しています。緊急手術症例に占める75歳以上の高齢者の割合は38%、重症合併症を有する割合は39%と高くなっていますが、タイミングを逸することなく緊急手術が可能であり、術後透析や人工呼吸器管理、体外循環装置を含む集中治療、病棟・リハビリスタッフの早期回復を目指したきめ細かいケアにより、緊急手術をうけられた患者様の80%が自宅退院、14.3%が転院・転施設となっており、概ね良好な転帰を得ています。

 

図1 外科年間手術件数における緊急手術の割合(2014-2021年度)

 

図2 緊急手術の原因疾患(2014-2021年度)

 

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